2023年現在の日本ではインターネットの普及により誰でも手軽に情報を入手できるようになりました。
顧客それぞれのニーズも多様化し、企業でも顧客情報管理やデータの分析を行うことが重要になっている状況にあります。
そこで注目されているのがCRMシステムです。
このCRMシステムを企業に導入することによって営業や普段の業務を効率化することができるため、すでに多くの大企業でも導入されており、働き方改革などにも役立っているのです。
当記事では、そんなCRM(Customer Relationship Management)の定義や顧客管理、現代社会との関係や求められる背景、導入のメリット・デメリットについても詳しくご紹介していきますので、「CRMとは?」という疑問を解決したい方やシステムの活用をお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
CRMとは?
CRMとは、正式にはCustomer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略で、マーケティング手法の1つです。
日本語では「顧客関係管理」や「顧客関係性マネジメント」などと訳されることが多く、CRMをビジネスに活用することで、顧客ニーズの把握や満足度向上につなげることが可能になります。
一般的に『CRM』は、顧客管理システムのITツールとして認識されがちですが、『CRM』が持つ本質的な意味は「顧客を中心に考えてビジネスを展開し、良好な関係を構築することで利益の最大化を目指すマーケティング手法」のことを指しています。
現在は、『CRM』というマーケティング手法を導入するための様々なアプリケーションツールやITツールが存在しているため、初めて『CRM』と聞いた方は「顧客関係管理ツール」=「CRM」と思われがちです。
「顧客関係管理ツール」=「CRM」という認識でも大きくは間違いではありませんが、『CRM』とはマーケティング手法としての概念であり、「『CRM』を実現するために「顧客関係管理ツール」が数多く存在している」が正しい認識になります。
CRMの特徴とは?
CRMは大きく次の3つの特徴に分けることができます。
CRMシステムでは、顧客情報の管理を基礎として、顧客のニーズや過去の購入履歴、次期見込み等の情報も把握することが可能です。
つまり、情報を参考にして優良な顧客を育成するためのマーケティングシステムと言えるでしょう。
CRMを活用したマーケティングは顧客に直接アプローチする営業者だけではなく、マネージャーなどの管理者も利用可能です。
こうしたことから、自社内の社員が連携し、会社全体での売上アップが期待できるでしょう。
CRMとSFAの違いとは?
CRMと混同される用語としてSFA(Sales Force Automation)が挙げられます。SFAは日本語で訳すると営業支援システムなどと表現されることがあり、CRMとは異なる概念です。
その特徴としては以下のようなものがあります。
SFAは主に営業活動の支援を行うためのシステムです。
マーケティング戦略を立てるためにデータを部署内部で共有することや、書類作成の作業を削減する業務の効率化の面で役立てることが可能です。
CRMは優良顧客を育てることを主たる目的としているシステムであるため、営業をメインにしているかどうかという点において両者は異なっていると言えます。
CRMが必要とされる背景とは?
CRMの定義とは上記のようになっていますが、ここまで注目されている背景とはどのようなものなのでしょうか。
その理由としてはさまざまな内容がありますが、主なものとしては以下のことが挙げられるでしょう。
以下では、なぜ現代においてCRMが必要とされるのかについて詳しく解説していきます。
①顧客の分析を行うことが必須になっているから
上述したように、現代ではITの進化によって誰でも手軽に情報を入手できるようになりました。そして、そうした背景もあり、個人のニーズが細分化された状態にあるのです。
このような状態で顧客それぞれの満足度を高めるためには、正確な情報分析を行いニーズに応えられる対応を行うことが大切になります。
具体的には、顧客一人一人の購買履歴を分析し、製品やサービスの需要を調べたり、新たな商品の開発などを行う必要があるでしょう。
こうした情報をもとに新着のサービスを顧客にアプローチする方が、取引が成立する可能性を高めることができます。
CRMを導入すれば顧客情報を正確に分析するのに役立つため、必要とされている背景があるのです。
②新規顧客の獲得よりも、優良顧客の育成に注力する必要があるから
現代の市場では、新規顧客の獲得よりも優良顧客の育成に注目されています。
これは同じようなサービスが多数存在している市場においては他社との差別化が難しく、新たな顧客を得る上で大変な労力と費用が必要になるからです。
事実、既存顧客を維持するコストというのは新たな顧客獲得に対して4〜5分の1ほどに抑えられることが分かっています。
このような理由から、すでに自社の製品やサービスを利用している顧客を優良化し、リピーターが増えるように工夫することが企業に求められているのです。そのため、顧客満足度を高める効果のあるCRMはより一層需要が高まっていると言えるでしょう。
③属人化している顧客情報管理を改善しなければならないから
従来の企業において、詳細な顧客情報の管理については担当者個人に委ねられていました。同じ部署内の社員であっても細かな顧客の情報は分からず、属人化している状況だったのです。
このような状態が引き起こす問題として、顧客へのサービスが低下することが挙げられます。
例えば、製品やサービスに不備があり、お客様から電話で問い合わせがあったとしても、担当者がいなければ対応するまでに時間が掛かってしまうでしょう。
CRMを導入すれば、会社内の顧客情報を一元的に管理することが可能になります。
どの社員でも等しく対応することができるので、上記のような問題点を解決可能になるのです。
また、貴重な商談やセールスの機会があった時にも即座に対応できるので、新たな案件獲得に繋がります。
顧客との関係を良好なものにすることや、新規取引の獲得の面でも役立つツールであることも、現代でCRMが必要とされる要因と言えるでしょう。
CRMのメリット
CRMが現代でも注目されていることは先ほどお話した通りですが、当然、導入するメリットがあるからこそ多くの企業によって利用されています。
CRMを導入するメリットとしては、具体的には主に以下の通りです。
以下で、それぞれについて解説していきます。
①顧客情報管理や営業管理を徹底できる
CRMを導入すれば、顧客情報や営業情報の正確な管理や統合を行うことができます。
CRMの基本となるのは顧客リストです。
このリストは基礎となる顧客の氏名や住所だけではなく、これまでに利用した商品やサービスの履歴も記録されています。
そのため、顧客一人一人のデータに着目して人気の商品のジャンルをチェックしたり、行動を分析して新製品の開発に役立てることができるでしょう。
例えば、季節ごとに売れている商品や適切な金額を確認することで、より顧客に求められるサービス開発を行うことが可能になります。
また、部署や部門をまたいで情報を管理しやすくなることも魅力の一つです。
システムで全ての情報の概要を合わせて管理できるので、より徹底した情報処理を行えます。
②顧客の満足度向上につなげることができる
CRMの活用によって顧客満足度を高めることにつながります。
上述したように、CRMを導入すれば社内で情報の共有性を高めることができ、担当者がいなくても別の社員が同じサービスを提供できます。
そのため、迅速な対応や顧客に応じた施策を考えることで結果的に顧客満足度を向上させることができるでしょう。
また、CRMによって得た情報を分析し、より顧客のニーズにマッチしたサービスを展開すれば、リピーターを増やす点でもメリットがあります。
③新たな戦略の提案に役立てることができる
その他には、新たな戦略の提案に役立てることができる点もCRM導入のメリットと言えます。
似たようなサービスで溢れかえっている情報社会では、ただ物を生み出せば良いというわけではありません。
しっかりと顧客それぞれのニーズを分析し、正しい戦略を考えなければならないのです。具体的には次のようなことを把握する必要があるでしょう。
- 人気となる商品の分野はどのようなものか
- 利用者が購入しやすい価格の金額はいくらか
- 季節ごとによく購入されている商品は何か
こうした情報を事前にリサーチしておき、適切なタイミングで提案することで、購入の確率を高めることができるでしょう。
CRMはこのようなマーケティング戦略の面でもメリットがあります。
CRMのデメリット
上記のように多くのメリットがあるCRMですが、実際に利用する際にはデメリットも存在しています。
主に以下のことにはあらかじめ注意しておくとよいでしょう。
以下でそれぞれについて解説していきます。
①運営するには費用が必要
デメリットとしてまず挙げられるのは、やはりお金がかかることでしょう。CRMを導入することによって得られるメリットは大きいですが、その反面、初期費用であったりランニングコストが必要になります。
無料のツールを利用する場合には費用はかかりませんが、有料版のものを使うためには次のような費用が発生するため、事前に確認することが大切です。
- CRMシステムを会社に導入する際に発生する初期費用
- 使い方や利用方法をまとめたマニュアルの制作費用
- セミナーの講習などを行う際に必要になる研修コスト
- 新たなシステムに更新するための費用
メリットの多いCRMにはその分費用も発生することも忘れずに押さえておきましょう。
②定着させるには時間と労力が掛かる
組織に新しいシステムを導入して間もない頃は、これまでの顧客管理や営業管理と異なることに抵抗感を覚える方も多でしょう。
操作の仕方を覚えて円滑な運営ができるようになるまでは、作業が止まってしまう場面もあるはずです。
こうしたことを事前に予測しておき、CRM担当のチームを編成したり、誰でも簡単に読めるガイドを作成しておきましょう。
できるだけツールを使いやすい体制を構築おけば利用者の負担を減らすことができます。
初めのうちは苦労することも多いかもしれませんが、一定期間が経過して運営が軌道に乗ってくればこれまで以上の成果を実感できるはずです。
③目に見えた結果はすぐに出ない
CRMは顧客ニーズの分析や満足度を高めることが本質となるシステムです。
そして、このようなことは導入すればすぐに結果につながるものではなく、日々のデータを入力、蓄積し続けてようやく効果を発揮するものと言えます。
そのため、システムを利用し始めたからといってもすぐに結果につながるわけではないということをあらかじめ理解しておきましょう。
場合によっては、システム導入の意図を説明するためにセミナーなどを実施する必要もあるでしょう。
ただし、システムが浸透し、各々の社員がツールを使いこなせるようになれば販売や受注数の向上を成功させることができます。
それまでの間はシステムの運営を行う人や経営する側ができるだけツールを利用してもらえるようにリードしていくことが大切です。
CRMを選ぶ際のポイントとは?
実際に自社へ導入するCRMを選ぶ際には、どのようなことを基準にして選べば良いのでしょうか。
システムを選定する段階でお悩みの方は以下のことに着目して最適なサービスを選択するようにしましょう。
以下でそれぞれについて詳しく解説していきます。
①ツールの使いやすさと画面の見やすさ
まず、当然ですが使いやすいツールを選ぶようにしましょう。
使い方が分かりにくく、画面の情報も見づらいサービスであれば、利用者に上手く浸透しないことが予想されます。
できればどのような年齢層の人でも容易に扱うことができ、スマートフォンやタブレットなどの端末で場所を選ばずに作業できるものが良いでしょう。
利用する社員の視点に立った柔軟な思考が肝要です。
また、操作性についても利用者が快適に使えるツールであるかどうかが大切になります。
ユーザーがストレスなく利用できるようなシステムを選択することが重要になるでしょう。
②目的達成のために必要な機能が搭載されているか
目的達成に向けて必要な性能が備わっているかどうかについてもしっかりチェックしておきましょう。
事前に自社で決めている目的や目標を確認し、その達成に向けて有用なツールであるか確認することが大切です。
そもそも目的に沿っていないシステムであれば、何のために導入する価値があるのか分からなくなってしまいます。
そのため、この部分は絶対にブレないように確認を徹底しておくようにしましょう。
③定着しやすいノウハウやサポートがあるか
上記でも解説しましたが、CRMは導入してから社内で定着するまでに時間が掛かります。
そのため、定着する間までのノウハウやサポート体制がしっかりとしているのかも見ておきましょう。
できるだけフォローしてくれる体制が整っているサービスを選択しておけば、後々分からないことも質問することができます。
CRMの効果を最大まで高めるためにも、いくつかの会社を比較し、より良いものを検討するようにしましょう。
CRMの導入手順とは?
CRMを導入する際にはそれぞれの手順に沿って行っていく必要があります。
主に、次のような流れになりますので、押さえておきましょう。
以下で、それぞれについて詳しく解説していきます。
①自社にCRMを導入する目的の確認
システムを選定する前に、まずは自社の課題を明確にしておきましょう。
システムを活用してどのような戦略を立てるのか、また導入の目的を徹底することが大事です。
実際にシステムを導入している企業の中でも、本来の目的が曖昧なまま利用しているケースもあります。
利用するプロセスが可視化されておらず、何を狙って導入するのかがはっきりしていなければ導入する意味がありません。
そのため、まずは目的を設定し、社内で共有することが重要になります。
②自社の課題を整理し、KPIを設定する
KPIとは中間指標のことを表しており、上述したように全体的な目的を設定することができれば、次はKPIを確定させましょう。「設定した目的を成し遂げるために何をするべきなのか」ということを明確にすることで、効率的に業務を遂行することができます。
具体的にはこれまでの売上を分析し、実現可能な範囲で目標の数値を決めましょう。
そして設定したKPIを参考にしつつ、計画の見直しや改善を行なうことが大切です。
③ユーザー数の確認・ツールの選択
続いて、実際にシステムを利用することになるユーザー数を確認しましょう。クラウド型CRMなどではユーザー数×月額料金などの数値を用いてコストを計算することができます。また、無料ツールなどでは利用できる期間に制限がある場合もありますので、人数の確認が欠かせません。
ユーザー数まで把握できれば、使用するツールを選びましょう。
先ほど設定した目的に応じて自社にマッチするツールを選定することが大切で、いきなり有料版から利用するのが不安であれば、まずは無料版のものから使ってみるのも良いでしょう。
もし利用するシステムに不安がある場合、ツールの評価や利便性、実績などの一覧をまとめた表を作り、社内で会議などを実施しながら吟味する必要があります。
どのツールが最適なのかを総合的に判断し、継続して利用できるものを選びましょう。
④導入テストを行い、本格導入
本格的に導入するまでに、まずはテストを行なっておきましょう。最初から社内全体に導入するのではなく、少ない人数で運用テストを行うことをおすすめします。
日常の業務をある程度予想し、1週間を目安としてシミュレーションすることが大切です。
このように事前テストを行っておけば、実際に利用する社員が悩むことになるポイントや足りない機能などを洗い出すことができます。
また、ユーザー目線に立ったマニュアルの作成にも役立つでしょう。
一通りのテストが終われば、本格的に導入していきます。
あらかじめ用意しておいたマニュアルを社員に提供し、導入した後のサポート体制やフォロー活動を充実させながらシステムを活用してもらいましょう。
⑤まずは既存顧客の適用から始める
CRMの効果を早めに得るためには、まず既存の顧客への適用から行うのが最適と言えます。具体的には、すでに自社の製品を利用している顧客情報を集め、ニーズに対応したサービスを行うことで顧客の満足度を高めます。
そして、満足度を向上させることで優良な顧客の育成を行うことが大切です。先ほども解説したように、新規顧客の獲得は既存顧客の維持に対して4〜5倍ほどの費用が掛かると言われています。このように優良顧客を確保すれば自社の利益を維持するだけではなく、経費の削減にもつながるのです。そのため、既存顧客の情報を可視化し、顧客満足度の向上を行っていくのが良いでしょう。
CRMシステムの具体例
では、実際に提供されているCRMシステムの代表としていくつかの事例をご紹介していきたいと思います。今回ご紹介するのは、以下の3つのCRMです。
以下ではそれぞれについて詳しく解説していきます。各サービスで気になるものがあれば、WEB上にある各サイトのページにアクセスしてみてください。
①eセールスマネージャー
eセールスマネージャーはソフトプレーン社によって開発されているCRMシステムで、CRMは国産のシステムになっており、国内における顧客満足度はトップのサービスになっています。
具体的な機能としては、入力したデータをすぐにグラフ化できることや訪問先の地図を表示させることができるなど、多彩なものが用意されているのが特徴です。
一度の入力で必要な情報を全て自動反映させることができるため、少ない操作で様々なデータの分析を行いたい方は利用してみてはいかがでしょうか。
②Sugar CRM
Sugar CRMはアメリカで作成されたCRM・SFAです。世界でも多くの会社で利用されており、営業管理や顧客関係管理など様々な性能を有しています。表を用いてスケジュール管理を行えるカレンダー機能も用意されており、用途に応じて使用可能です。
こちらのサービスでは無料版と有料版の両方が提供されています。無料版では契約管理などの一部機能が利用できないので、あらかじめ注意しておきましょう。
③kintone
kintoneはCybozu社によって提供されているCRMです。こちらのツールを利用すれば、Excelやメール、紙媒体の書類など様々な形式で鏤められた情報を一つにまとめることができます。多くの情報を視覚化することでチームの意識を統一することができ、業務の効率化を進めることが可能です。
サポート体制の評判も良く、会社の目的に応じてアプリを追加できるというメリットもあります。実際に運用する際にはアプリ同士を連携させることも可能なため、スムーズに導入できる点も魅力と言えるでしょう。
まとめ
CRMを導入することで見込み客の発見や表面化していない顧客のニーズを分析することに役立ち、非常に便利です。
一括で資料やデータ処理の実行が可能になり、大幅に業務の効率を上げることにつながるでしょう。
もし、これから利用することを検討しているのであれば自社の事業形態に応じて最適なツールを選ぶことが重要になります。
いきなり有料版のものを使用するのが不安な場合には、試しに無料ツールをダウンロードしてみるのも良いでしょう。提供しているサービスを複数チェックし、よく比較検討した上でシステムを選定することが大切です。
また、実際にシステムが使われている企業の導入事例を参考にすればより利用するイメージを明確にでき、同じ業界や似ている環境にある企業の実践例などを事前にチェックしてみてください。
実際に導入する際は自社に合わせたより良いサービスを利用し、その効果を体感してみてはいかがでしょうか。
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