カスタマーサクセスとは、ビジネスシーンにおいて事業を成功に導くコンテンツとして注目されており、多くの企業が導入しているサービスです。
名前のとおり、自社製品やサービスを利用している「顧客の成功体験の実現」を支援します。
しかし、似たような言葉である「カスタマーサポート」とよく混同されがちです。
当記事ではカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いや重要性について、詳しく解説していきます。
カスタマーサクセスの実施をご検討中の方やそもそもカスタマーサクセスがよくわからないという方はぜひ参考にしてください。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いとはなんでしょうか。
KPIや役割など、異なる点を大きく分類したので一つずつご説明します。
- 取り組む姿勢の違い
- KPIの違い
- 起点の違い
- 目的の違い
- 役割の違い
取り組む姿勢の違い
まず、カスタマーサクセスとカスタマーサポートでは取り組む姿勢が異なります。
カスタマーサクセスは顧客を成功に導くため「能動的に」アクションを起こします。
自ら進んで顧客の成功体験実現をサポートできるよう様々な働きかけをします。
一方のカスタマーサポートは、顧客満足度を上げる(下げない)よう「受動的に」サポートする姿勢で取り組みます。
問い合わせやクレームなど、顧客からのアクションがあって初めて働きかけることになります。
カスタマーサクセスは普段から顧客に対して能動的なアプローチを施し、ビジネスのゴールや成功が何なのかを把握した上でサービスの活用方法を提供するという点で、カスタマーサポートとは明確に区別できます。
KPIの違い
次に、KPIの違いについてです。
カスタマーサクセスは「サービスをどれだけ顧客に継続利用してもらったか」や「既存顧客からの利益がどれくらい上がったか」が指標となります。そのため、KPIとしては「チャーンレート(解約率)」や「アップセル・クロスセル率」、「顧客満足度・NPS」を設定することになります。
NPS(Net Promoter Score)・・・顧客自身の満足度だけでなく、他人にも勧めたいと思うかどうかを示す指標。
一方のカスタマーサポートは「顧客のトラブルや問題をどれ抱く迅速に解決・解消できたか」が指標となるため、問い合わせのある顧客への対応数や応答時間などをKPIに設定します。
起点の違い
次に、両者では活動の起点が大きく異なります。
カスタマーサクセスでは「顧客がサービスを利用し始めたとき」が起点であり、そこからあらゆる支援をして能動的に顧客を成功へと導きます。
しかし、カスタマーサポートでは「顧客が不満を抱えたとき」を起点とするため、問題があって初めて受動的に活動することになります。
顧客が不満や問題を抱えないよう未然に防ぎ、常に満足度を高めることがカスタマーサクセスの大きな役目なのです。
目的の違い
次に目的の違いについてです。
カスタマーサクセスでは、自社製品やサービスを使うことで顧客が課題を解消し、ビジネスなどを成功させることが最大の目的です。
それに対してカスタマーサポートでは、自社製品やサービスを使う顧客の「使いづらい」や「故障した」といった不満やクレームをなくし、正常に機能している状態を作ることを目的としています。
つまり、サービスを正しく使用してもらうことを目的とするのがカスタマーサポート、そのサービスによって顧客が成果を得ることを目的とするのがカスタマーサクセスなのです。
役割の違い
最後に、役割の違いについてご説明します。
カスタマーサクセスでは、解約率の低下やLTVの最大化、アップセル・クロスセルによる利益を発生させるという3つの役割を担います。
また、営業部や開発部など各部署と連携しながら情報を分析し、全社単位で顧客の成功に向かう体制を整えるのもカスタマーサクセスの役目です。
一方カスタマーサポートでは、収益には直接結びつかないものの、顧客の不満を解消できるようにサポートする役割を持つためすべての組織に必要な部門です。
基本的にカスタマーサポートは全社ではなく自部署内でサポートを完結させるという点においてもカスタマーサクセスと異なります。
カスタマーサクセスの重要性
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについて解説しました。
本項ではカスタマーサポートがなぜ独立した部署として置かれるべきなのか、その重要性について説明します。
カスタマーサクセスがなぜ注目されているのか
まず、カスタマーサクセスが注目された背景として、サブスクリプションモデルの普及が挙げられます。
従来の市場では、サービスや製品を利用するために代金を支払い所有する買い切り型が中心となっていましたが、サブスクリプションモデルが出回ったことによりサービスや製品を利用する権利を購入する形が受け入れられるようになりました。
企業にとっては買い切り型と違って顧客に継続利用してもらい利益が得られるというメリットがある一方、簡単に解約されないように工夫する必要性も高まりました。
そこで、顧客が満足する成功体験を得られるよう能動的に支援するカスタマーサクセスが注目されることとなったのです。
カスタマーサポートでは代用にならない
カスタマーサクセスでは顧客の成功体験をもとに利益を上げる、いわばゼロからプラスへの活動がメインですが、問題を迅速に解決・改善し製品の利便性を維持するカスタマーサポートはマイナスからゼロへの活動であり、考え方が異なります。
また、顧客の成功に向けて能動的に取り組むことで顧客より先に課題を見つけることができるのもカスタマーサクセスならではのメリットです。
そして、満足度の高いアクティブユーザーに対してはアップセル・クロスセルを積極的に行えるという点においても、カスタマーサポートは代用になり得ません。
このような理由から、カスタマーサクセスはカスタマーサポートとは別の独立したサービスとして成り立ち、カスタマーサポートでは補えないのだと分かります。
カスタマーサクセスを取り入れるかどうかの判断基準は?
当記事をここまで読んだ方には、企業の中にカスタマーサクセスを導入するべきかどうか悩まれている方が多いのではないのでしょうか。
企業がカスタマーサクセスに関する業務をどの程度行えているかが、カスタマーサクセスを導入するか否かの判断基準となります。
<カスタマーサクセスを導入すべきケース>
CAC(新規顧客の獲得コスト)>既存顧客を維持・拡張するコスト
上記のように、新規の顧客獲得よりも既存顧客を維持・拡張するコスト(予算)が低いのであれば、カスタマーサクセスを導入する価値があります。
また、Saasビジネス業界やサブスクリプション型サービスを展開している企業においては、既存顧客の継続利用がとても重要であるためカスタマーサクセスを導入することをおすすめします。
一方すでに営業部やマーケティング部などでLTVの向上や解約率低下のための施策(契約期間が終了する顧客に再契約のアプローチをしたり、優良顧客にアップセルやクロスセルを行ったりするなど)を何か行なっているのであれば、そこから独立させるとよいです。
まとめ
当記事ではカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについて解説しました。
主なポイント一覧は以下のとおりです。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
取り組む姿勢 | 能動的 | 受動的 |
KPI | 解約率、アップセル・クロスセルなど | 対応回数、応答時間など |
起点 | 顧客がサービスを利用し始めたとき | 顧客がサービスに不満を抱えたとき |
目的 | 顧客の成功体験 | サービスが正しく機能する状態 |
役割 | 利益向上、全社単位で取り組む | 不満解消、自部署内で解決 |
顧客と良い関係を構築するという意味では両者は似ている部分ももちろんありますが、考え方や姿勢は根本的に異なることがわかります。
カスタマーサクセスは顧客の成功体験を目指すうえで能動的にかつ企業全体を巻き込んでアクションを起こすことが大切です。
そのためにも両者の違いを正しく理解し、それぞれどんなアプローチをしていくべきなのかを考える必要があります。
関連記事では事例や具体的な仕事内容などについても紹介していますので、カスタマーサクセス担当者や今後実施する予定の方、転職中の方はぜひ参考にしてください。
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