近年、顧客と企業との関係性の質「カスタマーエンゲージメント」の重要性が増しています。
カスタマーエンゲージメントが向上することで、顧客と付加価値の高い良好な関係を築けるでしょう。
当記事では、顧客にとって有益な情報を提供し、カスタマーエンゲージメントを促進するためのマーケティング手法やポイントを紹介します。
カスタマージャーニーマップの作成や、ナーチャリングの実施、SNSや自社メディアでの発信などの手法を解説します。
これらの手法を利用し、顧客との長期的に良好な関係を築き、カスタマーエンゲージメントの向上につなげていきましょう。
カスタマーエンゲージメントとは
カスタマーエンゲージメント(顧客エンゲージメント)は、顧客と企業の関係性の質を表す重要な概念です。
カスタマーエンゲージメントを高めることで、企業は顧客の信頼度が上がり、付加価値の高い良好な関係を築けます。
良好なカスタマーエンゲージメントは、企業に多くのメリットをもたらします。
さまざまなチャネルを通じて、顧客と接点を持ち、対話を深めることで、顧客との関係を友好的に構築し強化していきましょう。
信頼関係を構築していれば、1度の取引で終えるだけでなく、継続的に企業は売り上げや利益を増やすことが可能です。
カスタマーエンゲージメントの向上は、企業にとって重要な戦略的要素です。
積極的に取り組んでいきましょう。
エンゲージメント(engagement)とは双方向の関係性の強さのこと。
カスタマーエンゲージメントと顧客満足度・ロイヤルティとの違い
カスタマーエンゲージメントと似た言葉で顧客満足度やロイヤルティがありますが、どのような違いがあるかみていきましょう。
顧客満足度との違い
顧客満足度は、製品やサービスの品質や提供されるサポートの質などに関する顧客の評価を測る指標です。
一方、カスタマーエンゲージメントは、顧客が企業や製品にどの程度関与し、顧客と企業の関係性が強いかを測る指標です。
カスタマーエンゲージメントは、顧客が企業に信頼をよせ、継続的に企業との関係を持ちたいと思うような状態を示します。
顧客満足度は、単に製品やサービスの評価を測る客観的な指標であるのに対して、カスタマーエンゲージメントは、顧客の心理的な関与を測る指標であるといえます。
ロイヤルティとの違い
ロイヤルティは、顧客が企業や製品に対して持つ忠誠心や継続的な関係性を示す指標であり、直接的に顧客の行動に現れることが多いです。
例えば、ロイヤルティの高い顧客は、企業の製品やサービスを購入し続け、また口コミやSNSでのシェアなどで周りに紹介することもあります。
一方で、カスタマーエンゲージメントは、企業と顧客との双方向の関係性の強さを示す指標です。
双方向の関係性がなければ、エンゲージメントとは言えません。
カスタマーエンゲージメントが重視されている理由
なぜ近年カスタマーエンゲージメントが注目されているのか、その背景についてみていきましょう。
商品やサービスの「コモディティ化」
「コモディティ化」とは、商品やサービスが単なる「商品」として一般化し、価格が下がる傾向にある状態を指します。
つまり、消費者にとっては、商品やサービスの選択肢が多数存在する中で、その差異があまり見られなくなっているということです。
この状況下では、消費者は単に価格が安い商品やサービスを選びがちになります。
そこで商品やサービスの特徴やストーリー、付加価値を強調し、顧客にアピールすることで、他社との差別化を進めましょう。
「この企業から買いたい!」など、企業にとって顧客に自社の商品やサービスに対する熱意を持ってもらうことが重要です。
これがカスタマーエンゲージメントが重要視される理由の一つです。
購買行動の変化
購買行動の変化には、さまざまな要因が関係しています。
例えば、選択肢の増加による消費者の迷いやすさや、商品の情報や価格の比較が容易になったことによる競争激化などが挙げられます。
さらに、SNSの台頭からリアル店舗とオンラインショップの垣根が低くなったことで、顧客が複数のチャネルを行き来するようになりました。
このような状況下では、企業は単に商品やサービスを提供するだけではなく、顧客とのつながりを深め、関係性を継続することが求められます。
そのため、カスタマーエンゲージメントを構築し、「選ばれる関係性」を作ることが重要です。
情報社会によるニーズの多様化
情報社会によって、顧客の情報収集能力が高まったことにより、顧客はより多様な選択肢を持つようになりました。
例えば、製品やサービスの比較検討が容易になり、情報が豊富になったことで、顧客はより自分に合った商品やサービスを選択できるようになりました。
そのため、企業は商品やサービスの多様性を高め、顧客の多様なニーズに対応する必要があります。
さらに、情報社会の発展により、顧客は企業に対して求める価値が多様化しています。
例えば、製品やサービスだけでなく、企業の社会的責任や環境に対する配慮など、商品やサービス以外の要因にも注目するようになりました。
このような顧客の価値観の変化に応えるためにも、企業は顧客との関係性を深め、顧客の信頼を得ることが重要です。
カスタマーエンゲージメント向上の目的とメリット
次にカスタマーエンゲージメントが向上することで得られるメリットに、どのようなものがあるのかみていきましょう。
優良顧客の獲得
カスタマーエンゲージメントを向上させるために、企業は顧客とのコミュニケーションを密にし、要望やニーズに合った商品やサービスを提供する必要があります。
企業はある程度関係の築けた顧客に対して特別なプロモーションや割引を提供することで、より信頼度を高めることもできます。
また信頼関係を築くことで、アップセルやクロスセルに繋がり、さらなる良好な関係性に発展する、好循環を迎えられるかもしれません。
優良顧客を獲得することは、企業にとって重要なビジネスの安定性を実現することに繋がります。
リピート率の向上
カスタマーエンゲージメントを高めることで、顧客が企業への信頼度が高まり、リピート利用する可能性が高くなります。
顧客が満足していることを示すフィードバックや、企業からの特典やサポートなど、顧客とのコミュニケーションを通じて顧客の興味を引き続けることが重要です。
また、リピート率を向上させるためには、顧客が商品やサービスを継続的に利用する意義を提示することも重要です。
例えば、新しい商品やサービスの提供、リピート利用に対する割引や特典などを提供することで、顧客のリピート利用を促進させます。
リピート率が向上することで、企業の売上や利益を増加させることが可能です。
解約率の低下
カスタマーエンゲージメントを向上させることで、顧客が企業に対してより強い結びつきを感じるようになります。
顧客が商品やサービスに対して満足している場合、企業に対して信頼感を抱き、競合他社に移ることを考えにくくなるでしょう。
また、企業が顧客とのコミュニケーションを密にし、顧客の意見や要望などの生の声に耳を傾けることで、ニーズに合った商品やサービスを提供できます。
これにより、顧客の満足度が高まり、解約率が低下することが期待されます。
さらに、顧客に適切なアフターサービスを提供することで、解約を回避することも可能です。
広告費の削減
カスタマーエンゲージメントを向上させることで、顧客に対する企業の価値提供が高まり、顧客は企業により強く結びつき、商品やサービスに対する信頼感が増します。
このような状況では、顧客は自然と周囲の人々に企業を勧めることが多くなり、口コミや、SNSによる宣伝の効果が期待できるため、広告費を削減できます。
また、顧客の情報を分析し、ターゲットを絞った広告を行うことも可能です。
顧客が企業のサービスや商品に関心を持っている場合、興味に合わせた広告をすることで、より効果的なアプローチができます。
このため、無駄な広告費を削減し、効果的な広告を行えます。
売上アップ
顧客との信頼関係が築かれると、顧客は企業の製品やサービスをより多く利用するようになります。
また、顧客が企業のブランドに信頼感持つようになると、同業他社の製品やサービスよりも、企業の製品やサービスを選ぶ傾向が高くなります。
これにより、企業の市場シェアを拡大でき、前述した項目を総じて、売上アップにつながるでしょう。
サービスの改善
カスタマーエンゲージメントが高い顧客はSNSで良い発信はしてくれますが、悪い発信はあまりせず、直接サポートに情報提供してくれる傾向があります。
顧客からのフィードバックを収集することで、顧客が抱える課題や不満を把握できます。
獲得した改善点を商品やサービスに反映させることで、より顧客満足度を向上につながるでしょう。
カスタマーエンゲージメント向上のポイント
カスタマーエンゲージメントを向上させるポイントで大切なものを4つ紹介します。
「顧客体験」を高めることを目的にする
顧客が商品やサービスを利用する際に、「購入して良かった」、「利用して良かった」と良い体験をすることは、その企業との関係を強化するためにも重要です。
顧客体験を高めるためには、ユーザビリティの改善やサイトのレスポンス速度の向上、購入プロセスの簡素化、サポート体制の強化などが有効です。
顧客が商品やサービスに対して良い体験することで、リピート率の向上や口コミでの広がり、さらには新規顧客の獲得にもつながるでしょう。
顧客情報を収集・分析する
顧客情報を収集する方法としては、アンケートやフォームの回答、ウェブサイトの閲覧履歴や購入履歴、SNSの投稿履歴などがあります。
収集した情報を分析することで、顧客のニーズや嗜好、購入までの行動データを把握することが可能です。
分析には、データ分析ツールを用いることが一般的です。
顧客情報を正確に把握し、カスタマイズされた施策を打つことで、カスタマーエンゲージメント向上につながります。
課題を洗い出して戦略を立てる
カスタマーエンゲージメントを向上させるためには、カスタマーサポートの強化やSNSなどを活用し、顧客との接点を増やし、顧客の意見や要望を把握することが重要です。
顧客からのフィードバックや調査結果などを分析し、課題を洗い出します。
その上で、改善すべき点を特定し、戦略を立てて改善に取り組みます。
改善の目標や期間を設定し、計画的に取り組むことが大切です。
One to Oneマーケティングで一人ひとりに施策を打つ
One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりに合わせた施策を打つことです。
顧客データを分析し、顧客ごとに最適なプロモーションをしたり、顧客ごとに異なるアプローチをとれます。
顧客とのコミュニケーションを深め、ニーズを満たせるため、顧客の満足度を高め、リピート率や口コミでの広がりを促すことが可能です。
カスタマーエンゲージメント向上の具体的な施策・方法
カスタマーエンゲージメントを高めるための具体的な方法を5つ紹介します。
カスタマージャーニーマップを活用する
カスタマージャーニーマップを活用することで、顧客の商品やサービス利用における心理的・感情的な変化を把握できます。
この変化を明確にすることで、顧客がどのステージにいるのかを把握し、適切な情報やサービスを顧客目線で提供することが可能です。
カスタマージャーニーマップとは、商品やサービス購入までの顧客の行動を、思考や感情も踏まえて時系列に整理したフレームワークのこと。
マップを活用することで、顧客が直面している課題や不満点、ニーズを洗い出すこともできます。
例えば、購入前のステージでは、商品やサービスに対する認知度が低く、情報収集が必要です。
このステージでは、商品やサービスの特徴や利点、価格などの情報を提供することが重要です。
また、購入後のステージでは、顧客が商品やサービスをどのように利用するかを把握し、顧客の疑問や不安を解消することが重要になってきます。
顧客にとって最適な情報やサービスを提供することで、顧客満足度を高められます。
そのためにも、顧客のニーズや課題を正確に把握し、顧客にとって有益な情報を提供していきましょう。
ナーチャリングを行う
ナーチャリングは、見込み客を育成するマーケティング手法で、見込み客に対して情報や価値を提供することで関心や信頼を育み、最終的に購入や契約につなげることを目的とします。
ナーチャリングは、見込み客がまだ購入の決断を下していない段階で行われるため、見込み客に対して販売を強制するようなアプローチはせず、ゆっくりと丁寧に関係を構築していくことが重要です。
具体的には、メールマーケティングやソーシャルメディア、コンテンツマーケティングなどを活用し、見込み客に対して情報や知識、ノウハウを提供していきます。
ナーチャリングは、顧客獲得だけでなく、既存顧客の維持や、顧客ロイヤルティの向上にも有効な手法とされ、さらにはカスタマーエンゲージメント向上にもつながります。
顧客の属性や行動履歴などを分析し、適切なタイミングで適切な情報やコンテンツを提供することで、ターゲットに合わせたナーチャリングを行っていきましょう。
SNSや自社メディアで積極的に発信する
SNSや自社メディアを活用することで、多様な情報を発信できます。
例えば、商品やサービスの特徴や使い方、新しいプロモーションの情報、業界のトピックスやトレンドなど、顧客が関心を持つ情報を提供することが重要です。
また、定期的に情報を発信することで、顧客とのコミュニケーションを継続的に行え、カスタマーエンゲージメント向上につながります。
SNSは、リアルタイムでの情報発信が可能な場所であり、顧客とのリアルタイムなコミュニケーションを図ることもできます。
One to Oneマーケティングでコミュニケーションを図る
顧客が100人いれば100通りのアプローチ方法が考えられるため、顧客ニーズに合わせた施策を打つことがOne to Oneマーケティングの特徴です。
メールマガジンやSNSなどで接点を増やし顧客との関係を深め、データ分析結果をもとに、顧客1人ひとりに最適な施策を打つことが重要です。
顧客の好みや嗜好を把握し、それぞれに合わせた商品やサービスを提供することで顧客満足度の向上、リピート率の向上などが期待できます。
顧客1人ひとりのニーズに合わせた施策を打つことで、カスタマーエンゲージメントを高められます。
One to Oneマーケティングで、顧客とのコミュニケーションを重視し、顧客データを分析して最適なコミュニケーションを取りましょう。
クロスチャネルでリアルタイムな体験を提供する
クロスチャネルとは複数のチャネルを持ち、チャネル同士で顧客や在庫のデータを連携している状態のことを指します。
店舗での販売とオンラインストアでの販売、SNSでの情報発信などを連携させ、顧客が求める情報や商品をリアルタイムに提供することで、顧客のニーズにマッチしたサービスを提供できます。
クロスチャネルで顧客は自分に合った商品やサービスを容易に見つけられ、カスタマーエンゲージメントの向上につながるでしょう。
また、顧客の情報や購買履歴を蓄積して分析することで、より精度の高いターゲティングを行い、マーケティング効果を高めることも可能です。
カスタマーエンゲージメント向上を促進するツールの利用
カスタマーエンゲージメントを向上するためのツールとしては、顧客とのコミュニケーションやフィードバック収集に重要な役割を果たす「CRM(Customer Relationship Management)ツール」が挙げられます。
CRMツールを活用することで、顧客の情報を一元管理し、購買履歴やアクション履歴、コンタクト履歴を確認できます。
顧客のニーズや課題、指向性などを把握し、顧客に対してより良いサービスや製品を提供できるでしょう。
おすすめのCRMツールについて、特徴や費用について以下の関連記事でまとめています。
是非、導入の参考にしてみて下さい。
まとめ
カスタマーエンゲージメントとは、顧客との関係を深めることで、リピート率や顧客満足度の向上につながる重要な概念です。
カスタマーエンゲージメントを高めるためには、カスタマージャーニーマップの活用やナーチャリングの実施など、様々な施策が必要とされます。
また、SNSや自社メディアを活用した情報発信や、One to Oneマーケティングの実施など、顧客1人ひとりにあったコミュニケーションを図ることも重要です。
カスタマーエンゲージメントを向上させ、顧客と付加価値の高い良好な関係を築いていきましょう。
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