SaaS企業において、解約防止に貢献するとされ注目を集めているのがオンボーディングです。
しかしオンボーディングを実施すると、なぜ解約防止につながるのか、仕組みをよく理解できていない人もいるようです。
そこで、当記事ではオンボーディングの重要性から成功へのポイント、活用事例まで解説していきます。
自社の商品やサービスを継続的に利用してもらう方法を模索している企業の担当者の方は、ぜひご参考にしてください。
カスタマーサクセスのオンボーディングとは
カスタマーサクセスにおける「オンボーディング」とは、顧客がサービスを使い始めてから、使用方法や機能を理解して、いち早くサービスを使いこなし定着させることを支援するプロセスを指します。
サービスの使用目的や使用方法をユーザーに明確に伝えることが、オンボーディングにおいて重要になります。
では、なぜそこまでオンボーディングが重要視されているのでしょうか?次章でその背景について解説していきます。
オンボーディングの重要性
まずはじめに、オンボーディングの重要性について解説していきます。
オンボーディングの重要性は大きく4つあります。
①カスタマーサクセス全体に影響を及ぼす
②顧客満足度を上げることでチャーン(解約)の防止
③アップセル・クロスセルの促進
④LTV(顧客生涯価値)の最大化につながる
1つずつ解説していきますので、参考にしてみてください。
1.カスタマーサクセス全体に影響を及ぼす
サービスを導入した顧客のライフサイクルは、一般的に「導入期」「活用期」「定着気」の3段階にわけて考えられます。
オンボーディングはその中で「導入期」から「活用期」へのスムーズなステップアップをサポートする役割を担います。
顧客ライフサイクルは段階的に進むもので、導入期から活用期への移行に失敗すると、サービスに価値を実感できないため、サービスの利用を早々にやめてしまう可能性が高まります。
そのため、カスタマーサクセスの最初の第一歩を成功させるポイントとして、オンボーディングは重要なのです。
顧客満足度を上げることでチャーン(解約)の防止
オンボーディングで顧客満足度を上げることでチャーン(解約)の防止ができます。
顧客数が増えてサービスに定着することで安定した収益を継続的に見込むことができます。
しかし、顧客が成功体験を得られずストレスを感じてしまうと、解約などの「離脱」に繋がる恐れがあります。
そこで、オンボーディングの段階で継続して利用したいと思う体験を提供し、顧客満足度を高めることが重要なのです。
3.アップセル・クロスセルの促進
オンボーディングでは、アップセル、クロスセルによる顧客単価の引き上げが期待できます。
アップセルとは、顧客が購入したサービスをアップグレードしてもらうことで、クロスセルとは、購入したサービスの関連商品などをさらに追加購入することです。
オンボーディングにより、商品やサービスに満足してもらうことができれば、その効果をさらに高め拡大したいと考え、アップセルやクロスセルも促進します。
また、アップセル・クロスセルは、サービスの継続使用に加えて顧客単価およびLTVの向上にもつながります。
4.LTV(顧客生涯価値)の最大化につながる
オンボーディングによって、顧客ロイヤリティが向上し、LTVの最大化につながることがあります。
顧客ロイヤリティとは、顧客が企業や商品、サービスに対して愛着を持つといった意味を表します。
また、LTVとは「Life Time Value」の略で、一人のお客様が生涯において自社の商品やサービスの利用を通して企業にもたらす価値のことです。
すなわち、商品やサービスを長期間継続して購入・利用する顧客ほど、LTVが上昇し企業の成長に貢献しています。
特にサブスクリプション型のビジネスにおいては、中長期的に利用してもらえるとLTVの最大化につながっていきます。
オンボーディングを通して、LTVの最大化を目指しましょう。
オンボーディングを成功させるためのポイント
ここからはオンボーディングを成功させるためのポイントを解説していきます。
それぞれのポイントを意識してオンボーディングを進めていきましょう。
1.顧客の現状・抱えている課題を把握
カスタマーサクセス施策を成功させるためには、顧客の現状・抱えている課題を把握する必要があります。
前提として顧客は、現状の課題を解決するために企業が提供しているSaaSの導入を決めています。
そのため、その課題を企業側が解決できなければ最終的に解約されてしまいます。
また、顧客の状況や要望に沿った提案をするには、利用場面や利用人数、サービスへの期待などを顧客にヒアリングする必要があります。
したがって、顧客の成功体験を生み出すには、課題の背景まで理解したうえで最適な提案をしましょう。
2.オンボーディングのKPIとKGIを明確にし顧客に共有
2つ目は、オンボーディングのKPIとKGIを明確にすることです。
どの状態をオンボーディング完了とするのか、目標を定義したうえで、オンボーディング完了率(期間内に特定の工程を終えたユーザーの割合)をKPIとして定めます。
具体的な数値を設定してKPIとして指標にすることで、企業側のだれが対応しても適切かつ変わらない、一貫性のある支援ができるようになるのです。
また、KPIを設定することで、自社のオンボーディングが効果的に機能しているか、あるいはユーザーが定着しているかどうかを可視化し、施策の評価・改善に役立てられます。
3.顧客アプローチの手法を設定
オンボーディングの期間とゴールが決定したら、次はオンボーディングを行うためのサポート手段を決定していきます。
大まかなサポート手段としては、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの3つの区分に分類してあぷろ一般的です。
顧客のニーズにあったサポートを手段でアプローチしていきましょう。
ハイタッチ
はじめにハイタッチ層です。
ハイタッチ層は、3つの中でLTVが1番高く、企業の安定した収益に大きな影響を与える顧客層です。
そのため、顧客ごとに担当者をつけて密なコミュニケーションをとり、離脱を防ぐ必要があります。
また、顧客の商品やサービスに対する継続的な利用が見込めたり、導入規模が大きかったりするハイタッチ層においては、手厚いサポート体制の構築が必須です。
顧客のニーズに合わせて個別に商品やサービスをカスタマイズして、徹底的に囲い込みましょう。
ロータッチ
次に、ロータッチ層です。
ロータッチ層は、ハイタッチの顧客群よりもLTVが低い層に向けてアプローチする手法です。
ハイタッチ層と比べて顧客数が多いため、顧客のニーズに合わせたカスタマイズは困難です。
そのため、商品やサービスに関係するセミナーや勉強会などを開催し、定期的にフォローしていきましょう。
また、ロータッチ層は、ハイタッチ層ほどコストや時間をかけられないため、いかに効率的かつ効果的な手段を考えられるかがポイントです。
テックタッチ
最後に、テックタッチ層です。
テックタッチ層は、LTVが1番低い層ですが、顧客数が最も多くなります。
顧客数が多いため、チャットボットやメールマガジンなどの自動化ツール(テクノロジー)を中心に顧客をサポートしていきます。
また、顧客単価が低いため、最小限にコストを抑えながら効率的にアプローチしていきましょう。
4.PDCAを回す
4つ目は、PDCAサイクルを回すことです。
オンボーディングのゴールと目標設定、サポート手段が決定したら、実際にオンボーディングを実施していきます。
ポイントは、実行した施策が期待通りの効果を挙げているかどうかKPIを通して定期的に確認・評価し、改善していくことです。
PDCAサイクルを回していきながら、より効果的なオンボーディングの実施を目指しましょう。
オンボーディングの活用事例
ここからは、オンボーディングの成功事例を3つ解説していきます。
どのサービスも顧客が長期的に継続されているので、ぜひ参考にしてみましょう。
1.Slack
1つ目はSlackです。
Slackは、ユーザー情報の入力から初めてのワークスペース作成までの流れが非常にスムーズで、ユーザーはストレスを感じることなくセットアップできます。
また、ビジネスチャットとして有名な「Slack」のオンボーディングで重要な役割を果たしているのが、Slackボットです。
Slackボットは「わかりやすさ」だけではなく「親しみやすさ」が、ユーザーが機能を学習し、操作するモチベーションを形成している事例です。
2.Canva
無料デザインツール「Canva」のオンボーディングでは、ユーザー登録直後に利用目的を質問され、回答に合わせて表示内容を変えています。
また、実際に機能を試しながら、活用法を学べるため、迷うことなくCanvaを利用できます。
これによりユーザーは必要な設定を行う場所方法を探す手間を最小限にして、サービスをスムーズに利用開始できます。
3.SmartHR
3つ目はSmartHRです。
同社のカスタマーサクセスは、サービス継続率99.7%を誇っています。
成功の秘訣として、SmartHRではオンボーディングのステップを細かく設定することで、顧客が一人立ちできるだけではなく、顧客の課題も把握できるようになっています。
また、顧客管理ツールや顧客体験向上ツール、プロジェクト管理ツールなど様々なツールを導入して、業務を徹底的に効率化しているのも特筆すべきポイントです。
まとめ
ここまで、SaaS型サービスにおけるオンボーディングと、そのプロセスやポイントについて解説しました。
オンボーディングを成功させることは、顧客だけでなく自社にとって、非常に重要なことです。
そして、オンボーディングは顧客をサクセスへ導くプロセスの中で、最も力を入れるべきポイントです。
オンボーディングに失敗してしまうと、顧客は競合他社のサービスへ移ってしまうことにもなり、結果的に解約につながっていきます。
ぜひ当記事を参考に、顧客に成功体験を提供できるようなサポートを続けていきましょう。
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